#10【続・ブラックワイフ】そのチャリは残酷な状況を容赦なく語る
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状況を容赦なく語るヨメのチャリ
例によって深夜になってもヨメは帰って来ず、平日の夜なのにも関わらず朝帰りの日々が続いていた。
オレは仕事から帰ると子供らに飯を食わせ、寝かせた頃の深夜に、コンビニに行くふりをしてハマの番長が入っていったマンションを見にいってみた。
マンションの下に自転車置き場があるのだが、そこになんと偶然ヨメの自転車を見つけた。やっぱりそうか、という気持ちと悔しさに似た気持ちが混ざり合った、なんとも言えない気分になった。
しかし、それはただの偶然でもなんでもなかった。
その後も帰って来ない夜のたびにオレは自転車置き場を確認しに行ってみたんだが、ヨメの自転車はほぼ毎回置いてあった。
逆に自転車がない日がたまにあると、それはそれで不安だったというなんとも言えない心境になっていた。
ヨメは確実にハマの番長の部屋に居る。入り浸っている。そう思っていた。そうとしか説明がつかなかった。
状況は明確ではあったが、そのことについてはあえて触れることはしなかった。泳がすためだ・・・。
ひきつけ
次の週末、案の定ヨメは夜帰って来ない。送ったLINEは無視だしオレは何も聞いてなかったのだが、留守番していた息子には送別会で遅くなると伝えていたようだ。
その夜も番長のマンションに自転車を確認しに行ったがその時は置いてはなかった。
そんな中、末っ子が高熱を出し夜中にうなされていてかわいそうだと思っていたら急に痙攣し出してしまった。大量に嘔吐して白目をむいて痙攣。俗にいう「ひきつけ」ってやつだった。
ものすごい焦ったが、兄弟と協力しあって救急車を呼んで病院に行った。残った子供らにママに電話してと頼んだが音信不通。オレからも電話やLINEも送信したが未読だ。
こんな時に何やってんだか・・・。
病院には心配して高学年組の娘と息子が自転車で駆けつけてくれた。幸いなんとか大事には至らず落ち着いたので、ひきつけ防止の下剤を打った後にオレは3歳になったばかりの息子を抱えタクシーで帰宅した。
時間は午前4時当然ヨメは帰ってない。ヨメからはコールバックも何もない。もうあてにできない、いいやと思った。
鉢合わせ
3歳のゲロで汚れてしまった部屋を一通り掃除し終えると外は明るくなっていた。6:00近かった。
やっと一息つける。タバコが切れたので買いに行こう外に出て家からコンビニに向かうと反対側から見覚えのあるチャリを押してくる女がこちらに近づいてくる。
ヨメである。 隣にはみたことのない男が一緒に歩いてきた。
(誰だコイツ・・・)そう思ったが、そんなことよりも末っ子がひきつけを起こしたってのに音信不通だったことの方がオレは腹が立っていた。
ひきつけの状況を説明するのにヨメと話している時、その男は近くで時折頷きながらただ黙って聞いていた。一通り話し終えるとオレは聞いた。
「ところでこのかたはどちら様?」
すると男は「浜ちゃんの彼氏です、ミツコさんとはさっきたまたまそこでばったり会って一緒に歩いてきただけです。」と答えた。
1月に死んでしまった。浜ちゃんのほぼ内縁関係にある男のようだった。
オレは素直にその節はお気の毒に・・・と思った。
少し話たあとヨメはお腹が空いたからご飯を食べてきていいかと言ってきた。
「末っ子がこんな状態なのにか?しかもこんな時間にやってる店なんてないだろ?」
そう答えたが、
「ファミレスとかあるから・・・家に食べるもんも特にないし・・・」
幸い末っ子も今は落ち着いてぐっすり寝ているだけなので、若干呆れていたがまぁ行ってくればと見送った。
浜ちゃんの彼氏と名乗った男は別の方向に同時に帰っていったようだった。
この時オレは「ハマの番長」と、「浜ちゃんの彼氏」は完全に紐づいていなかった。
なぜなら内縁の愛していた人を亡くしてまだ間もない状況で、その友達であるオレのヨメとよろしくやっているなんてことは想像できなかったからだ・・・。
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